鯉のぼりの色について

５月になると、男の子の成長を祝うために鯉のぼりを飾るお宅もたくさんあります。

青空に色鮮やかな鯉のぼりがたなびく様子は、多くの人の目を楽しませてくれます。

ですが、その色について考えたことはありますか？様々な色の鯉が泳いでいますが、そこには何か意味があるのでしょうか。

ここでは、鯉のぼりの色について詳しく解説します。色について知っておくことで、飾りかたも変わってくるかもしれません。

【 最初は黒しかなかった 】

今でこそカラフルな鯉のぼりが空を飾っていますが、鯉のぼりが誕生した江戸時代には黒しかありませんでした。

それは、当時鯉のぼりが描かれた浮世絵を見ればわかります。どの絵を見ても黒のみで描かれています。

そもそも、鯉のぼりを飾る風習が始まったのは、将軍に男子が生まれたことをお祝いするためのものでした。

世継ぎである男子のために、吹き出しなどを立てたのです。この頃は、まだ鯉のぼりという言葉もなく、武者のぼりと呼ばれていました。

その風習は武家の家庭や庶民にも流行してきました。やがて、縁起がいいからとのぼりに鯉を描いたことで、端午の節句には鯉のぼりという風習に繋がったのです。

やがて、時代が明治に移り変わってくるようになり、鯉のぼりも次第にカラフルになっていったのです。

【 家族を表す色 】

そして、鯉のぼりの色は家族を表しています。

まず、一番上の真鯛は黒で父親の色です。

黒という色は、冬または水を表しています。冬は、寒さから生命や食物を守る大切な季節です。更に、水がなくては生きてはいけません。

生命にとってなくてはならない冬や水は、一家の主である父親のイメージそのものなのです。

そして、赤く鮮やかな緋鯉は母親をイメージしています。

赤は、夏や火を表しています、夏は、生命を健やかに育む、四季のなかでもとりわけ重要な季節です。そして、人類になくてはならない火。火は、人に千恵を授ける存在です。

母親が、新たな生命を誕生させて育む存在だということを赤で表現しているのです。

そして、子供を表す青には、春や樹木が表されています。

新たな生命が誕生し、活発に活動する春。そして、スクスクと育っていく樹。まさに子供の成長を表すにはピッタリです。鯉のぼりには、様々な意味が込められているのです。

黒と赤と青。家族を表すこの３匹の鯉は、平和な家庭を表現しているのです。

【 子供が増えたときには 】

ですが、男の子が多い家庭ではどうなのでしょう。全員青なのでしょうか？

そんなときには、青い鯉の下に緑または紫の鯉を足すようにしましょう。

そして、女の子だった場合も鯉のぼりを増やすことが大切です。

よく、端午の節句は男の子だけと考えている人もいますが、女の子だからといって飾ってはいけないというわけではありません。

その場合は、女の子らしいオレンジまたはピンクといった色を用意するといいでしょう。

【 オリンピックが影響 】

それまで、シンプルな色だった鯉のぼりの色が、次第に多彩になってきたのは、一説にはオリンピックが関係しているとも言われています。

1964年に開催された東京オリンピック。そこで描かれた五輪のカラフルな輪を見たある鯉のぼり職人は、そのことに感銘を受けてカラフルな鯉のぼりを作成したそうです。

このことが鯉のぼりの色を鮮やかにし、いつしか馴染んでいきました。現在、鮮やかな鯉のぼりが大空をたなびいている背景には、一大イベントが関係していたのです。

【 吹き流しの色にも意味がある 】

そして、鯉のぼりに欠かせないのが吹き流しです。吹き流しは、家を象徴しているとも言われています。

吹き流しというと、必ず青、赤、黄、白、紫です。

実は、この色にもきちんと意味があるのです。この色は、古代中国の「陰陽五行説」が関係しています。

陰陽五行説というのは、この世界のすべては陰と陽に分かれていて、この２つと木（青）、火（赤）、土（黄）、金（白）、水（紫または黒）が欠かせません。

これらすべてに、子供の成長が守られているのだということが表れているのです。

更に、神様を呼ぶための金の矢車。これらがすべて１つになって鯉のぼりなのです。

また、神道の場合は紫ではなく黒となるので、気をつけるようにしましょう。