今どきの雛人形とは?
雛人形といえば、3月3日の桃の節句、豪華な何段かのお雛様が和室にどんと飾ってあるのを想像する方も多いのではないでしょうか。平成初期ごろまでは7段飾りの大きな雛人形が主流でしたが、その後5段飾り、3段飾りとだんだんと小さいものが流行っていき、今では雛人形の流行りはそういった大きな3段や5段飾りの立派なものばかりではないようです。
というのも、昨今はマンションやアパート住まいの人も多く、また、一軒家でも和室を作らなかったりリビングの一角にほんの少しだけ畳のスペースを作るといった家庭も多いようです。
そのため、そもそも立派なお雛様を飾るスペースもなく、家族が普段集まるリビングのインテリアに合った雛人形が主流になってきているようです。
そもそも雛人形の起源は、古代中国の「上巳の節句」という行事と、日本の平安時代貴族の間で行われていた「ひいな遊び」という2つが組み合わさってできたものでした。
また、旧暦の3月のころに桃の花が咲くことや、桃に魔除けの効果があると信じられていたことから「桃の節句」とも呼ばれるようになりました。
「上巳の節句」では、元々中国では水に入り体を清め、宴をし、厄を払っていました。日本に伝わってからは、紙や木の葉で人の形をかたどった物に自身の厄を移して水に流し厄を払っていました。
「上巳」とは3月初めの巳(み)の日を指していましたが、魏の時代(220~265年)に3月3日と固定されていたようで、かなり古い時代からこの日に行われていたようです。
その上巳の節句で用いられていた人形の紙が変化し、布や紙で作った小さな人形を用いて遊んでいたことが「ひいな遊び」と呼ばれるようになります。やがてその布や紙で作った小さな人形は江戸時代に入ると人形の立雛から座り雛が主流になっていき、より豪華により立派になっていきました。江戸時代後期には、現代でも見られる7段飾りが完成していたといわれています。
遊び道具の一つであった雛人形ですが、雛人形が豪華になっていくにつれ、穢れを落とすもの・厄を払うという意味合いより身分の高い女性の嫁入り道具として扱われていくようになりました。
元々は少女たちの遊びだった雛人形ですが、現代では人形遊びを始める前の初節句を迎える女の子に親や祖父母などが贈るのが主流ですよね。一般的には母方の祖父母から贈られるのが多いようで、これは嫁入り道具だったことの名残のようです。
最近では、「桃の節句を過ぎたらすぐにしまわないと嫁に行き遅れる」なんてことも言われていたりしますが、正式に何日から何日に飾っておくという期間はないようで、これはただの迷信かもしれませんね。せっかくの雛人形ですから、たまにしか行かない和室に大きな7段飾りを飾るよりは、小さくても家族がいつも集まる場所に飾りみんながいつも雛人形を楽しむということも今どきの楽しみ方の一つのようです。
さて、今どきの雛人形事情ですが、具体的にはどんなものが売れているのかご紹介します。
昔ながらの顔のお雛様とお内裏様の場合、ケース付きが多いようです。昔ながらのものはやはりぼんぼりや屏風などパーツが多いので、ペットを飼っているお宅でも安心して飾れます。
他にも優しいぬくもりのある木でできたものや、丸くころんとした形の陶器でできたものなど材質も様々で、顔はなくシルエットに着物を着ただけのようなもの、お雛様とお内裏様や台などがパズルのようになっていてコンパクトに収納できるもの、キャラクターものなど、形やサイズも今どきの雛人形は多種多様です。
ハンドメイドで個人が販売できるサイトもたくさんあるので、ステンドグラスやタペストリータイプ、つまみ細工、ヌメ革でできたものなど、こだわりのあるご家庭も好みのものが簡単に見つかります。
今どきの雛人形はデザインやサイズが多種多様で、どんなお部屋でもインテリアに合わせて浮かないデザインのものを選ぶことができます。
また、保育園や幼稚園では季節ごとに制作物を作りますが、毎年桃の節句が近づくとお雛様を作って持ち帰る園も多いようで、子供本人の作ったお雛様を飾るのがいちばん喜ぶという子も多いのだとか。これはあなたが作ったもの、こっちは祖父母が買ってくれたもの、という風に飾るとお部屋が賑やかになって楽しいのではないでしょうか。
古く中国から伝わった桃の節句ですが、時代と共に様々な変化を遂げて現代の雛人形やひな祭りとなってきました。最近では女の子のいないご家庭でも、季節のインテリアとして雛人形を飾り、ちらし寿司を作って食卓を囲むなど家族みんなで桃の節句を楽しむご家庭も多いですよね。今後も時代の流れや住む環境、流行りなどでひな祭りはおそらく変化していくでしょう。性別や家族の形や人数、年齢などにかかわらずどんなご家庭でも家族みんなが一緒に楽しめる年間行事となっていくかもしれませんね。