羽子板を贈る意味とは

日本にはお正月に楽しむ羽根突きという遊びがあります。子供の頃に遊んだことがある方もいらっしゃるのでないでしょうか。この羽根突きで羽根を打ち合うためには羽子板を使用します。羽子板は遊び道具として使われるだけでなく、縁起物として贈り物としても使用されています。

赤ちゃんが生まれて初めて迎えるお正月を初正月と言い、皆でお祝いをするという風習が日本にはあります。この初正月にお赤ちゃんの祖父母、友人知人などから女の子には羽子板を、男の子には破魔弓を贈るのです。初節句にひな人形や五月人形を贈ることは有名ですが初正月のお祝いはあまり知られていないようです。

【ではなぜ女の子に羽子板を贈るのでしょうか？】

羽子板の起源は平安時代に宮中で楽しまれていた「毬杖」（ぎっちょう）遊びと言われています。ヘラのような形をした木の杖で、木製の毬を敵陣に打ち込むという遊びです。これが鎌倉時代になると羽子板の形に近い木の板に変わり、室町時代に現在の羽子板の形になったと言われています。この頃から羽子板には羽根突き用の羽子板と、贈り物用の羽子板の２種が存在するようになったようです。年の初めに羽根を突くことで邪気をはね除けて１年間の無病息災を願うようになり、お正月に羽根突きをするという事が定着していきました。

羽子板は縁起の良い末広がりの形をしているので、羽根突きをするほかに厄除け、邪気払いのお守りとしてお正月に飾るようにもなりました。これが羽子板飾りの始まりです。この頃は宮中や貴族だけの物でしたが江戸時代になるとしだいに一般庶民にも羽子板が普及していきます。江戸時代の羽子板は豪華に装飾したものや縁起の良い絵が描かれたもの、人気の歌舞伎役者を模したものなど華やかなものに変わっていき、縁起の良い贈り物として扱われるようになります。羽根突きに使う羽根にも意味がありました。羽根の先端についている黑い球は、無患子（むくろじ）という大木の種を使っています。その名の通り、子供が病気を患う事の無いようにという願いも込められているのです。まさに赤ちゃんへの贈り物として最適な品という事です。なぜ女の子なのかは、もともと羽根突きは宮中の女官たちがしていたことだったのではないかと言われています。このように羽子板は女の子の初正月に贈るものとして定着していったのです。

【では、いつだれが羽子板を贈るのでしょうか？】

　羽子板を飾る時期は、お正月の準備を始める１２月１３日「正月事始め」と言われています。１２月２９日（二重苦）１２月３１日（一夜飾り）は縁起が悪いとされていますので、避けた方が良いでしょう。最近はおしゃれな羽子板をインテリアとして１年中飾る方もいらっしゃるようですので、あまり堅く考えなくてもいいと思います。３月３日のお雛様の時に一緒に飾ると華やかさが倍増しますのでやってみてください。お正月だけ飾るのであれば、しまうのは１月１５日の小正月前後とされています。羽子板は直射日光や湿気に弱いので、窓際や水回りから少し離れた場所に、子供達から見えるリビングに飾ることをおすすめします。

【誰が贈るのでしょう？】

　一般的には母方の実家が用意するものとされていましたが、現在は特に決まりは無く父方の祖母と母方の祖母で折半したり、子供が生まれた順番で交代で贈ったり、ご両親が気に入ったものを購入したりと様々なようです。ランドセルみたいですね。赤ちゃんの初正月に贈る予定ならば、飾りつけの時期を考えると１２月の初旬には相手方に届くようにした方が良いでしょう。そのためには１１月中に購入しておくことをおすすめします。

ひな人形や五月人形もそうですが、ぎりぎりになると人気の商品はどんどん売れてしまいます。羽子板は伝統工芸品ですので贈答用の物は職人さんの手作り品が多いのです。人気デザインの羽子板や有名な職人さんの作った品は売り切れてしまいます、店頭に並び始める１１月中旬ごろが品数も多くて買い時と思われます。また、羽子板は赤ちゃん一人ひとりに贈られるものです。２番目３番目の子供が生まれても共有せずそれぞれに羽子板を用意してあげてください。贈り主も１人目の赤ちゃんには贈ったけど２人目には贈らなかったなどという事が無いように注意していただきたいと思います。

羽子板にはいろんな種類があります。大きいものから小さいもの、ガラスのショーケース付きの物などもありますので、贈られる側の家庭事情にも考慮していただきたいと思います。集合住宅やアパートの場合あまりにも大きなものを贈り物としますと飾るのはもちろん保管するのも大変なことになってしまいます。

羽子板を贈るという事は、赤ちゃんを諸々の邪気から守り、健やかに育つようにと願いを込めたものです。贈る側も贈られる側もお子さんに羽子板の意味を教えながら美しい羽子板を愛でてほしいと思います。