羽子板の羽根の作り方と由来
羽子板というのはもともとは貴族の遊びで使われていたものでしたが、徐々に庶民にも広まっていき、今では遊ばれる目的で購入されるよりは、飾りやインテリア、また節句のお祝いの飾りとして購入されることが多いものになりました。
遊びとして使われていたことを知らない子ども達であれば、羽子板が羽根とセットになっているということも知らないかもしれません。羽子板同様に、打って使う羽根にもまた意味や由来があるものですから、注目してみると良いかもしれません。そして羽子板の羽根の由来を知るには、その作り方を知ることというのも大事です。
羽子板の羽根やその先の根元の素材も、時代とともに変化しているものです。現代の羽子板の羽根の根元は、ほとんどが黒いプラスチックの重りが付けられているものです。
実は、元々はプラスチックではなく、ムクロジという木の実が使われていました。硬い木の実はその他にもたくさんありますが、ムクロジの種は硬く、重みやサイズも羽根につけるパーツにぴったりだったということでも、使われてきました。このムクロジの実は漢字で書くと無患子となり、子どもが病気を患わないようにという、いわば厄除けのような願いも込められていました。
ただ単に手頃なサイズで、使えるものだから使っていたという単純な理由ではなく、ちゃんと意味もあるものなので、もしもお正月に羽子板を使って羽根突きをする機会があれば、子どもにも雑学として話してあげると良いかもしれません。
このムクロジという木の実は、本州や四国、九州が原産となっているので、日本で手に入れやすい木の実であったと思われます。とても使いやすく、手ごろに利用できたことがうかがえます。また木の実だけでなく木材も家具などの材料にされることがあるので、とても庶民的な身近な素材であったともいえます。 このムクロジは他にも数珠や洗濯、食用と色々な使い方がありますから、以外にも羽子板の羽根以外にも日常生活の中でお世話になっているでしょう。特にムクロジの種は数珠の玉の素材としても使い勝手がよく重宝されてきたようです。とても綺麗な種なのでなめらかでさわり心地が良いのも魅力的です。また、数珠はこすったり重ねたりすることが多いので丈夫な素材でないとすぐに壊れてしまいますが、ムクロジの種は丈夫で欠けにくいので使い勝手も良いです。
こうしたことからも、羽子板の羽根は作り方にもこだわりがあり、ちゃんと由来があることが分かります。また、石鹸に材料としてムクロジを使用した場合、とても泡立ちが良くなるのが特徴のようです。洗い物にも使える天然素材ですから、化学洗剤ではなく出来るだけ自然派のものを使っていきたいと考えている人や、ナチュラル素材にこだわっている人にもおすすめできます。
そのほか食用にもできるので、使ってよし、食べて良しの植物であることがわかります。安全に使えるという意味でも、子どもの遊び道具に使う素材としてとても適していることが分かります。こうした庶民の生活になじんできたムクロジの実も、今では羽根の先につけられるのはほとんどがプラスチック製です。木の実が使われていたことを知らない人も多いでしょう。羽根も羽根の先についているパーツも今はプラスチックですが、昔はちゃんと本物の羽根を使い、木の実を使ってつくられていました。昔ながらの羽子板で楽しみたい時は、この本来での素材での作り方を見てみて、作ってみるのも良いでしょう。
ムクロジの黒い種を豆に見たてることで、魔滅で魔除けになる、マメに暮らせる、といった縁起かつぎの意味もあったそうなので、ムクロジを使うことで良い縁を呼ぶこともできます。
他に羽子板が厄をはね返す事で縁起が良いとされていました。そして、羽根と景気を良くする(跳ね上げる)とかけて、商売繁盛を祈って贈り物とすることもあったようです。軽く打ちやすい、ムクロジは壊れにくい、という物理的なこと以外にも昔は縁起物と結び付けて考えられることが多かったので、ムクロジの種が羽根のパーツにぴったりだったということもあるでしょう。ムクロジと聞いてもどんな木なのか想像しにくいということもありますが、公園やお寺に行けばムクロジの木が育てられていることも多いです。そこで実を見ることもできるので、お正月や節句の機会に子供に話をしてみて、探してみるのも良いでしょう。今は羽子板もその羽根も工場で簡単に作ることが出来ますが、本来の作り方を知れば、羽子板もその羽根にもちゃんと意味があり、何故それを使うのかといったこともわかってくるものです。プラスチックが当たり前になっていて、効率よく使うにはプラスチック製も良いですが、伝統を意識したものを飾る時や、ちょっと興味を持った時には子供に話して聞かせてあげると良いでしょう。いつもの公園の実にも興味がわいてくるものです。