正月に飾られる破魔弓の豆知識

新生児の初節句に親戚や知人から破魔弓を贈られる家庭も少なくありません。破魔弓とは弓と破魔矢がセットになっているものであり、邪気や厄災から子どもを守り健やかな成長を祈願する神聖な武具です。魔除けの意味で宮中や武家で正月に破魔弓を飾るようになりました。やがてその習慣は後に庶民の間にも広まって、破魔弓を正月に飾ることが広く浸透したのです。何故正月に飾るかといえば、正月に行われていた弓の技を試す射礼(じゃらい)という行事に使われた弓矢に由来するからと言われています。

ところで破魔矢のみがよく流通していることが多いですが、破魔弓で射て初めて邪魔を破り浄化する効力を発揮するといわれているため、破魔矢と破魔弓がセットになった方が良いのです。破魔矢と破魔弓は武勇を表す己の力強さで未来へ向けての災いと邪気を払う力があるとされているため、新年を迎える贈り物としてふさわしいのです。

魔除けの破魔弓を飾る時期は年末年始が一般的であるため、１２月の中旬頃に飾りお正月を過ぎた頃にしまうことが一般的です。破魔弓の購入時期として、１１月中旬あたりから店頭に並び始めるため、１２月初旬には飾りつけができるように購入すると良いかもしれません。正月に近づくと店舗でも商品が売切れになるケースがあるため、早い時期から準備しておくことが肝心です。飾り始める時期についても、大晦日に飾る一夜飾りや１２月２９日に飾る苦立ては縁起が悪いとされています。これはしめ縄飾りでも同様のことがいわれているので、この日に飾ることは避けた方が良いでしょう。破魔弓は小正月(１月１５日)過ぎにしまうのが一般的ですが、縁起物であるため一年中飾っておいても構わないとされています。そのため、破魔弓を五月人形の脇に置いて飾る家庭も少なくありません。

破魔弓を飾る場所としては、神棚に置いたり床の間に飾ったりするのが一般的です。ただし破魔弓はお守りの意味をもつことから、子どもが赤ちゃんの頃は皆が集まる居間、少し大きく成長したら子ども部屋、と言うように子どもの成長に合わせて場所を変えると言う飾り方でも問題はありません。魔除けの意味で玄関に飾っても良いかもしれませんね。いずれにしても、設置場所などに特別な決まりはありませんので、各家庭のセンスで飾り場所を決めてみましょう。ただし、神聖なお守りであるため我々が見下ろす一に飾らないように注意する必要があります。

飾った破魔弓をしまうときには注意点があります。破魔弓は湿気に弱いため、しまう際には乾燥した天気のよい日を選ぶようにします。雨の日や湿気の多い時期に収納すると、保管場所でカビが生えてしまう可能性があるため注意が必要です。破魔弓をしまう前には一度風にあてて乾燥させ、布や羽根ばたき等でホコリを取ってから収納しましょう。また、収納する箱の底に適量の除湿剤や防虫剤を入れてからしまえば、保管中の破魔弓をしっかり保護することができます。保管場所もあまり湿気がこもらず、直射日光が入らないところが良いでしょう。ところで、ケース飾りの場合はあまり問題ありませんが、組み立て式の破魔弓の場合は、翌年の出し入れで組み立てに戸惑うことが少なくありません。そうならないためにも、破魔弓が箱に入っている状態及び、箱から出した時の飾り方の写真を撮っておくと良いかもしれませんね。

一口に破魔弓といってもその種類は色々です。コンパクト型から本格派までさまざまな種類の破魔弓が販売されています。シンプルな基本型をはじめとして、額入り型・黒塗りケース・桐素材ケースなどが存在します。

特にケースに関しては、ケースは塗ってあるもの(黒塗り艶アリ・艶ナシ・朱塗り等)と、木目を生かしたもの(桐・欅・竹・杉・花梨・鉄刀木・紫檀・黒檀・黄金檀等)が販売されています。そしてバックに本金箔(金澤箔・川俣箔等)を貼った商品や、本金盛上げ蒔絵や金彩蒔絵を施した豪華な仕上げの商品も存在します。通常は板ガラスを使用した破魔弓が多いですが、面取りガラスを使用している破魔弓も販売されています。

面取りガラスの場合、ガラスが厚いので柱の溝に入れるため隅を薄く削っていることから、ガラスの隅に筋が見えることが大きな特徴です。ガラスだと倒したときに割れてしまうという声が多く、最近では軽量で割れにくいアクリル素材を用いたケースが増えています。アクリル素材は加工がしやすいため、パノラマ仕様や六角ケースといった多様な破魔弓となっています。破魔弓の弓の部分は、合成樹脂・木製・竹製で作られているのがほとんどです。矢に関しては合成樹脂のパイプ・木製・竹製となっていて、やじりの部分は合成樹脂・金属・木製から作られています。矢羽根は色々な鳥の羽が用いられますが、安価なものは鶏の羽を染めたものが多いといわれています。数ある破魔弓の中から、飾る場所や予算などを考慮して、自分たちに合った商品を選ぶようにしましょう。