雛人形の立ち雛について
雛人形にお内裏様とお雛様が立ち上がった状態の「立ち雛飾り」というものがあります。
実は、立ち雛は元々の雛人形の元祖に当たるものです。
雛人形の当時は、紙をより集め人形の形に作ったものを形代(かたしろ)と呼び、人の形をした紙切れに穢れを映して流すことで厄災から逃れるという文化が始まりとされています。
その為、当時は座った人の形を模したのではなく、立った状態の人形を作り出すことで立ち雛という人形を形作ったのです。
そこから時代が進み、江戸時代に入ると、主役である男雛及び、女雛以外にも着目される、内裏様にも主役が移り変わります。
こちらは座り仕事であるが故、座っている雛人形がだんだんと主流となったのです。
ではなぜ、男雛及び、女雛は座ってないのでしょうか?
実はこの雛人形、天皇家が行う儀式をお祝い事として定着化させたため、上段に据えている人物たちは、天皇家に近い人間であるため、立ち仕事により行事を執り行う様子を表していたため、立ち雛になるのです。
逆にいえば、天皇家に近い人間以外は公務員という扱いになりますので座り仕事でお仕事に励むものや、神楽であっても座り仕事でお仕事に当たっているのは公務員であることから、今も昔も座り仕事のデスクワークをしていることの表れでもあるのです。
時代がさらに進むと、天皇家に近い人物たちも座ってお仕事に励むスタイルになっており、上段の男雛および、女雛も座って業務に当たっています。
では「男雛と、女雛のお仕事ってなに?」という疑問があるかもしれません。
これは、天皇家から任されたお仕事を記して上段よりも下の内裏様に命令を下すことを仕事としています。
今でいうトップダウン方式で命令を伝えていく役割が上段にあり、上段は命令を伝え発効する立場にある文官に当たり、下段に行けば行くほど発行された命令を実行し、その命令についてお祝いをするための音楽家の方たちとなっているわけです。
「じゃあ、全員を立ち人形にできないの?」という疑問もでてきますよね。
これについては可能ですが、問題もあります。
如何に人形を立った状態で据え置くかという問題です。
段数が多い雛人形において問題となるのは、据え置く際、安定して人形を形作り設置することができるかどうかが重要となります。
その為、すべての人形を立った状態で据え置くとなれば、固定方法が悩みどころになってきます。
固定方法自体は存在しており、方法もあるのですが、すべての人形を固定するという手間を考えた場合、座らせた人形を置いた方が設置も簡単にできますし、なによりも楽です。
その為、現在の雛人形の立ち雛は専用ケースに入った状態で、接着剤で固定するという方法で接着することで立った状態を維持しています。
この仕組みを採用すれば立った状態から倒れることなく、常に人形を固定することができるため不格好になりません。
雛人形は、一つの構造として考えた場合、座っている状態の人形の方が安定するためこちらが時代の流れにおいては主流となりました。
男雛と、女雛のみを主役に添える場合、立った状態でもよいのではないかという考えに基づいたのが立ち雛になり、立ち雛は江戸時代よりも前の雛人形の原型の行事であるということです。
江戸時代においては、すでに雛人形は今の雛人形と同じになっており、この時期から座り雛が生み出され今現在2つの主流を分けているのです。
段数が多い3段式や4段式のような雛人形になり、こちらは座り雛が主です。
これは設置を雛人形を購入した者自らが行いますので座っている方が設置を簡素化できるため段数が多い物は座り雛が主流です。
一方、コンパクトで雛祭りを簡素に執り行う目的で作られた、立ち雛はケース内に雛人形を据え置くという構成で作られているため、座っている状態のものと立っている状態のもの両者が販売可能で今現在の主流となっています。
なぜ、コンパクトタイプの立ち雛が人気となるかですが、これは日本の住宅事情があります。
段数が多すぎる雛人形は設置場所を多くとるため、置き場所に困るうえ、きちんと収納して保存するにも場所を取ることからコンパクトタイプで雛祭りをお祝いすることができる立ち雛が人気を得ているのです。
立ち雛であれば、専用ケースに入った状態で販売されており、かつインテリアとしても機能しますので雛祭りが終わっても飾ることを可能としています。
雛人形の立ち雛についてですが、元々の雛人形に起源は立ち雛ですが、時代が進むにつれ、内管の仕事を公開するようになるとすべての人形を立たせていたのでは安定性に欠けるということで飾るには向かないのではないか、となっていきました。
座り雛に移行し、再度置き場所に困るのではないか?という問題が生じ、今度は、男雛と女雛だけを立たせてケースに入れておけば雛人形として安定するのではないか?と移り変わりました。
そして、今現在の雛人形の立ち雛へと移行したわけです。